ひとり親の経験 報じる力に〈下〉
河田実央さん(テレビ朝日) テレビ朝日政治部記者とシングルマザーの二つの顔を持つ、河田実央さん(40)。母親としてどんな社会を残すのか、仕事を通じて自問しているという。日々動く政局を相手に取材現場を取りしきり、時には国会前で中継に立ち、動画配信サイトの解説コーナーにも出演する。番組の作り手としての成長、変化する政治取材についても語ってもらった。(聞き手・中村美奈子=元毎日新聞記者) ――東日本大震災の発生時はどこにいたのですか。 河田さん 岡山県の実家です。里帰り出産したばかりでした。福島第一原子力発電所の爆発事故が起きて、放射能に対する不安が広がり、東京に帰るのが怖かったです。5月になってようやく夫と長女と3人で東京で暮らし始めました。 原発事故の発生当時、テレビをずっと見ていると、「ただちに避難する必要はありません」と信じられないことばしか流れてきませんでした。子どもが生まれて初めて命を守る立場になって、テレビは必要な情報を届けているのかと真剣に自問自答するようになりました。子育てを優先して仕事を辞めることも考えていた時期がありましたが、伝え