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「正直しんどい…」 そんなとき、助けてくれた人とは。

  • 川口敦子
  • 4月25日
  • 読了時間: 8分

更新日:4月27日




報道現場で、子育てと仕事の両立を目指して日々奮闘する皆さんに、「そこんとこどう?」を聞く企画「ウチらの子育て」です!この回では、「正直しんどい…」と感じたとき、助けてくれた人は誰だったのかを聞きました。それぞれの経験と知恵が、読んでくださったあなたの参考になれば幸いです。(聞き手・川口敦子=フリーランス)

【この回では、次の皆さんの記事を読むことができます】 (記事はこちら)をクリックすると、それぞれの記者の記事に飛びます。スクロールしていって、全員の記事を通して読むことも可能です。



尾崎修二さん(毎日新聞社)
尾崎修二さん(毎日新聞社)

 ひとり親になってからの6年間、数え切れないほどいろんな人に助けられました。特に、妻が亡くなった直後の1、2年は「ママ友」の支えがとても大きかったです。

尾崎さんの記事はこちら (プロフィール) 1988年生まれ、千葉県出身。2013年毎日新聞社に入社。前橋支局、福島支局、東京本社地方部を経て2021年4月から福島・南相馬通信部。シングルファーザーとして育児家事に追われながら、原発事故の影響で今も居住できない帰還困難区域など福島の被災地の取材を主にしている。



作山哲平さん(京都新聞社)
作山哲平さん(京都新聞社)

地元の助産師さんは「人生の師」。分からないことがあるたび、さまざまなことを教えてもらいました。  作山さんの記事はこちら

(プロフィール)

 1988年生まれ。2014年、中日新聞社に入社し、愛知、三重、滋賀各県の支局で警察や市政を担当。長男の誕生に伴って2021年2月から1年間、次男の誕生に伴って2023年8月から約半年間の育休を取得。2024年、京都新聞社に入社。


尾崎修二さん

毎日新聞社 ひとり親になってからの6年間、数え切れないほどいろんな人に助けられました。特に、妻が亡くなった直後の1、2年は「ママ友」の支えがとても大きかったです。


尾崎修二さん(尾崎さん提供)
尾崎修二さん(尾崎さん提供)

2019年2月、長男が2歳8カ月だったとき、妻は42歳で亡くなりました。死因は胆管がんでした。胆管がんは、進行が早い割に気がつきにくい病気と言われており、妻の場合は、亡くなる10カ月ほど前に判明した時点で、「ステージ4、切除不可」との診断でした。医師からは「余命は半年ぐらいかもしれない」と言われていました。

妻にがんが見つかったとき、僕は毎日新聞社前橋支局から福島支局に異動して1年目が終わる頃でした。もともと入社前から「東日本大震災の取材をしたい」と希望しており、第1希望の赴任先を「福島」と言い続けてきて、その念願が叶って福島に異動してようやく仕事に慣れてきた時期のことでした。



福島県相馬市の田んぼで開かれた稲刈りイベント。尾崎さんの長男(奥左側の青い帽子の子ども)も参加した。2024年10月、尾崎さん提供。
福島県相馬市の田んぼで開かれた稲刈りイベント。尾崎さんの長男(奥左側の青い帽子の子ども)も参加した。2024年10月、尾崎さん提供。

病気の判明後、会社と相談して僕たち家族は実家近くの千葉県流山市に引っ越しました。妻はがんの治療のために東京都内の病院に通い、僕は泊まり勤務や休日勤務がない東京本社の職場に異動。妻に家事や育児を委ね、仕事だけをしていればよかった生活から、環境は一変しました。 最期は1ヶ月間の在宅介護を経て妻が亡くなり、ひとり親になってからの6年間は、数え切れないほどいろんな人に助けられました。特に、妻が亡くなった直後の1、2年は「ママ友」の支えがとても大きかったです。

妻は元来、社交的なタイプで、赴任地の前橋や福島ではいろんな場所に行っては、友だちをたくさん作っていました。ところが、がんが見つかって千葉に移り住んでからは出歩くことも減り、妻がそのころに知り合っていたママ友は一人だけしかいませんでした。 妻の告別式の数日後、僕はそのママ友に、妻が亡くなったことを伝えに行きました。「今この人とつながっておかないとダメだ」という直感があったのです。すると彼女は、僕の知らないところで他の人と相談してくれて、僕の住んでいる地区の子ども食堂の代表を紹介してくれました。僕はその後、子ども関係のいろんな地元イベントに顔を出し、最初からひとり親であることを打ち明けるようになりました。そんななかで気が合うお母さんや地域で子ども関係の活動をしているお母さんと知り合い、たくさんの友だちができました。

 


海岸で遊ぶ尾崎さん(右)と長男。2024年11月、尾崎さん提供。
海岸で遊ぶ尾崎さん(右)と長男。2024年11月、尾崎さん提供。

ひとり親になってから、ママ友たちに助けてもらったエピソードはたくさんあります。親子で風邪をひいて寝込んでいたとき、子ども食堂のグループLINEに「SOS」を送ったら、食材や飲料を買ってきてくれた人がいました。家に来て風呂を掃除したり、長男の世話をしてくれたりした人もいました。精神的にすごく辛い時期に話を聞いてくれて一緒に泣いてくれたり、保育園のお迎えの帰りに「今日はどうしても息子と2人だけで夕飯を食べたくない」という気持ちになったとき、ママ友の家で急きょ夕飯を食べさせてもらったりしたこともありました。そういう地域のつながりに本当に助けられていました。


2021年に福島・南相馬通信部に異動してから、千葉在住のママ友たちとリアルに会うことは少なくなりましたが、今でもオンラインでつながっている人は多くいます。初めてママ友になってくれた女性は、ずっと僕ら親子のことを気にしてくれて、最近3年ぶりにリアルで会いました。女性がうちの息子と楽しそうにツーショット写真を撮っている光景を見ると感慨深くて、心底から「有り難いなあ」と思いました。

作山哲平さん 京都新聞社 地元の助産師さんは「人生の師」。分からないことがあるたび、さまざまなことを教えてもらいました。


作山哲平さん(作山さん提供)
作山哲平さん(作山さん提供)

夫婦ともに「お互いフェアに育児に取り組みたい」と考え、長期間の育休を取得した私が「人生の師」と仰ぐのは、地元の助産師さんです。

長男が生後2~3カ月のとき、おっぱいを飲まないことが心配になり、地元の助産院に駆け込みました。そこで母乳を出しやすくするためのマッサージを受けたのですが、長男が初対面の助産師さんにすぐに慣れ、キャハキャハ笑っているのを見て「プロってすごい」と感動しました。その後も、抱っこの仕方や離乳食の与え方など、分からないことがあるたびにさまざまなことを教えてもらい、本当にお世話になりました。

私たちは、長男の夜泣きにも苦戦しました。長男が夜泣きをしたら、よかれと思って、まるで会社の電話を取るかのような勢いで(苦笑)ミルクをあげていたのですが、この行為が夜泣きを助長させていたようなのです。このときにも、夜泣き専門の看護師さんに支えられ、ミルクをあげる時間を決めて、そのスケジュール通りに進めていったところ、長男が1歳3カ月になったころに、夜泣きから解放されることができました。

私の経験としては、ただでさえ一日中、赤ちゃんの世話をする毎日を送っていると、頭がぼーっとしてくるものです。これまでしばしば選挙の取材で、子育て中の女性などに「今の政権に求めることは何ですか」という質問をすることもありましたが、自分が一日中、赤ちゃんと過ごしていると、そんなことを考えられるような精神状態ではなくなってくる。世の中から切り離されたような気分になって落ち込んだり、妻とのケンカが多くなったり、一度は布団から起き上がれなくなったりしたときもありました。

そんな生活は、育休を取ったことがない方には想像がつきづらいようで、これまでに「育休を取って、何をしていたの?」という質問を何回か受けました。私自身も実際に育児を経験するまでは分からないことだらけでしたので、子どもがいなかったり、パートナーが主に子育てを担ってきたりした方々が「育児中の時間の流れ方をイメージできない」というのは、ある意味では当然のことかと思います。

ただ一方で、「イメージできないこと」は、知る機会があれば、ある程度は想像できるようになるのではないかという希望もあります。具体的には、生後1~3カ月、3~6カ月、6カ月~1歳など、子どもの成長時期によってこんなことが起こりがちという「赤ちゃんあるある一覧表」のようなものを作成し、育児と関わりのなかった方(特に、子育て記者の上司)がそれを見る機会があったら、イメージをふくらませてもらうための助けになるのではないでしょうか。

実践している企業も既にあるかもしれませんが、人事担当や両立支援担当がこうした一覧表を作成し、上司が目を通した上で、子育て記者と定期的に面談する仕組みがあったら、上司の皆さんが部下の状況を把握しやすくなり、コミュニケーション上の齟齬が生じにくくなるのではないかと考えているところです。

厚生労働省によると、「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」の数は、1980年代には「雇用者の共働き世帯」の2倍弱でしたが、その数は1990年代に逆転し、2010年時点で、共働き世帯の方が2倍以上、多くなっています。

ただし、こうしたデータがある一方で、多くの新聞社では、ほとんどの時間を仕事に割いて成果を出してきた人が支配的な地位に就き、家庭や子どものケアは女性が担うという「男は外、女は中」という昭和のシステムが構造化されているように感じます。その壁はなかなか厚いと感じることもありますが、共働き世帯が多くなるなか、子育てに関わるのは女性だけではなくなっています。子育て中の女性と男性に対する、上司や会社側の理解と尊重が進んでいくことを願っています。


 
 
 

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